2008年4月27日日曜日

Superwoman

サイエンスの記事
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/320/5875/442

ヒトゲノムの多型情報から,正の淘汰を受けた場所を探すのによくつかわれる,Extended Haplotype Test (Long Range Haplotype Test)を開発したPardis Sabetiさんの特集です.

2002年に発表された論文は人類遺伝学の研究をしている人なら誰もが知っている有名なものです.基本的なフレームワークはFay and WuのH Testと変わらないのですが,単なる代表値の比較ではなく,よりコンピュータの計算を駆使したテストになっていますので,非常に使いやすいテストです.

女性なのも知りませんでしたが,記事では彼女のワーカホリックぶりと幅広い活動が述べられています.フィールドワークを含めた研究のみならず,アルバムを出しているロックバンドの作曲とボーカルもやっているとのこと.机の下の寝袋で三日間で二時間しか寝ていないというのもうなずけます.

これからも燃え尽きずに頑張ってほしいところです.

2008年4月24日木曜日

マーモセットゲノム

マーモセットのドラフトゲノムが公開されました.

マーモセットは新世界ザルで,マカクなどよりはヒトから系統関係が離れていますが,小型で飼いやすく,繁殖能力も高い(毎年双子を産む)ために医学実験によく用いられています.

先日のオランウータンを含めると,残る霊長類の系統はゴリラ,テナガザル,原猿類ということになります.遅かれ早かれ解読されることになるでしょう.

2008年4月15日火曜日

Journal@rchive

最近はJ-STAGEなどで日本の雑誌のPDFも読めたりしますが,Journal@rchiveというのはさらに上を行っています.日本の科学雑誌で古いものを中心にPDF化しているようです.

遺伝学雑誌なんて,1921年,大正10年の創刊号から読めてしまいます.OCRで読んでいるので文字も鮮明です.同じく歴史が古い人類学雑誌も最初から読めます.人類学なんてのは埋もれてしまった貴重なデータなどがあるのではないでしょうか.

流し読みをしていて気に入った,曾田龍雄博士の論文.確かメダカかゼブラフィッシュの体色はいくつか遺伝子が同定されていますよね.結果を比べてみると面白いかもしれません.

肝心の論文は,出だしは格調が高い割には哀愁が漂っています.念のため書いておきますが,これは学術論文です.以下引用(一部漢字は現代漢字に変更).

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「めだか」の体色の遺伝現象

予が「めだか」に就いて体色遺伝の実験を始めたのは大正二年で爾来年月を経過すること八星霜,随分永い間にも拘わらず得た結果は貧弱である.

これは元より予の菲才の然らしむる所であるが,一つには実験が住宅の片隅の数坪の空き地で小規模で行われ,水槽の如きも四十許の少数なのに因るので,若し大仕掛けで行ふことが出来たのであつたならば同様の結果を二三年は早く得たことと思ふ.

2008年4月10日木曜日

本棚:利己的な遺伝子

有名なドーキンスの代表作です.

僕が初めてこの本に触れたのは高校生の時でしょうか.それまで真面目に進化というものを考えたことはなかったので,なかなか目から鱗が落ちるような本でした.

この本の内容をあえて一言で言うと,

「淘汰の単位は遺伝子である」

ということに尽きます.それ以上でもそれ以下でもありません.集団でも個体でもなく遺伝子(または協調的な遺伝子のユニット)に淘汰はかかるのだということが色々な例をあげて丁寧に説明されていきます.これは現在主流のの集団遺伝学の考え方に一番近いものであると思うし,僕も大いに賛成します.

ただ,一つ問題なのは,そしてしばしば誤解されるのは「協調的な遺伝子のユニット」という言葉の解釈についてです.遺伝子淘汰説に対するよくある反論は,「一つの遺伝子が表現型を決めることはない」,という説明です.これはある意味では正しいでしょう.たしかに,遺伝学的な研究で発見された,一つの遺伝子が一つの表現型をきっちり決めているという例は豊富にありますが,それが生命現象のすべてではありません.したがって遺伝子の組み合わせが表現型を決めているという表現の方が正確に聞こえます.ただし,進化を漸進的なものと考えると,協調的な遺伝子の組み合わせがあったとしても,そのユニットのメンバーが一度に総替わりすることはなく,一つずつ代わって全体の適応度が試されるでしょう.そういう場合にはやはり淘汰の単位は遺伝子(機能的な最小ユニット)であると言ってよいと思います.

ドーキンスについて個人的な感想を述べさせてもらうと,とてもディベートが強そうだという感じ,そして確信犯的に誤解を受けそうな言い回しをしておきながら,決して尻尾を見せないこと,そんな印象を受けます.たとえば,ドーキンスの本を読むと彼が適応万能主義者のように感じることは多々ありますが,彼は「私は適応がすべてだとは思っていない」というような文章も紛れ込ませて書いています.
これだけの分量の著作を綱渡りのように慎重に書きながらかつ大胆な結論を持ってくる,それがこの本がこれだけ有名な理由であると思います.

利己的な遺伝子 <増補新装版>

2008年4月9日水曜日

ホテルの予約と新聞の取材

6月のSMBEの飛行機と宿を予約しました.いつもギリギリまで行動しないので,忘れないうちに.

ネットで検索.安い順にソートしてGoogle Mapに住所を入れて,会場に一番近い所で即決.ホテルの名前も覚えていません.我ながらいい加減な決め方ですが,せっかちな人間には便利な世の中になりました.それにしてもユーロは高すぎですね.

と,本日は産経新聞の取材を受けました.研究とは関係なく,研究所と地域との交流についての取材でした.しばらくしたら関西版の朝刊に載るそうです.

2008年4月5日土曜日

Article access statistics

先日発表した論文はオンラインで誰でもタダで読める雑誌に載せたのですが,その後のサービスでいったい何人が論文をダウンロードしたのかがわかるようです.論文を出した後はその評判も気になるので,良いシステムだと思います.

ただ,編集料と保管料として高額のお金を取っている割には,編集の質が落ちた気がします.1列で表示できる図を2列使って表示したりで,見た目のバランスが非常に悪いです.これまではすべて編集者さん任せでOKだったのですが(たまに解像度と印刷サイズの両方を求められますが),これからは最初から自分で設定済みのファイルを送るべきだと感じました.

まあ,紙媒体でなくスペースの制約がないので,印刷物と同じようなデザインにする必要はないのかもしれませんが.