2011年9月30日金曜日

久しぶりの単著

随分前に書いた後,しばらくお蔵入りになっていた論文がパブリッシュされました.

Naoki Osada. Phylogenetic inconsistency caused by ancient sex-biased migration. PLoS ONE 6: e25549.

ほんとにちょっとした話です.系統樹を書いたときにミトコンドリアや常染色体で系統関係が違うことはよくありますが,それが性による移住割合の偏りなどのせいであると結論付けることができるのか,という内容です.

現在の集団から多型を調べた場合は移住率の推定ができるので割とうまくいくのですが,現在いる集団の共通祖先より前に起こった過去の移住は移住率が推定できないので,結局大したことは言えないという,当たり前と言えば当たり前の結論です.

非常に簡単な計算をしただけの論文ですが,今まで誰もちゃんとやっていなかったので,簡単なガイドラインになると良いと思っています.

2011年9月12日月曜日

誤植

論文を書いている限りは誤植の恐怖は常に付きまといます.今日はこんなのを見てしまいました.

P < 5 x 105

明らかに-5の誤植とわかるのでそれほど気にはならないのですが,著者は少しヒヤリとしているでしょう.

2011年9月6日火曜日

ダッシュ,添え字

先日受け取った論文の校正でハイフン関係があらかた直されていました.ダッシュとハイフンの違いについては以前のエントリーでおさらいしましたが,まだまだ勉強不足だったようです.

Wikipediaを見てみると,人の名前をつなげるようなときは,ハイフンではなくen dashを使うようです(例:Mann—Whitney U test).ただし,名前がペアとして慣用的に使われている場合はハイフンでいいというようなことも書いてあります.複雑ですが,基本的にはen dashということで問題ないと思います.

他の論文も調べてみましたが,両方が混在していて実はかなり適当なのではないかと思います.とりあえず今回の編集者は細かいところまで見てくれたようです.

もう一点は,記号の斜体です.量や変数を表すアルファベットは普通斜体になりますが,それに添え字がつくときがあります.こちらのサイトを見たところ,添え字が量や変数を表す場合はイタリックなのですが,そうでない(例えば変数に説明を加える添え字)場合は,添え字は普通の字体になるようです.

集団生物学では有効な集団の大きさをNeで表しますが,このeはイタリックでない方が正解だと思います.論文や教科書を見てもeがイタリックなものは結構あるので,それほど気にする必要はないのかもしれませんが.

さらに,上記のNISTの文書では

"Because the comma is widely used as the decimal marker outside the United States, it should not be used to separate digits into groups of three. Instead, digits should be separated into groups of three, counting from the decimal marker towards the left and right, by the use of a thin, fixed space. However, this practice is not usually followed for numbers having only four digits on either side of the decimal marker except when uniformity in a table is desired."

と書かれています.数字4桁の場合はカンマは要らないのは知っていましたが,スペースを空ける書き方が推奨されているのは知りませんでした.

2011年9月5日月曜日

8語に32ドルを払う

つい最近,Molecular Biology and Evolution(MBE)であったリトラクション(論文取り下げ)が海外のサイトで取り上げられていました.MBEはよくお世話になる雑誌なので気になるところです.

取り下げの理由自体は,不正というよりは大きな解析ミスに著者のグループが気付いたのが理由とのことです.僕も何度か自分の論文のデータが間違っていた夢を見たことがあるので,これには同情します.しかし,その後の出版社の対応がお粗末でした.

まず,雑誌にはリトラクションされたという一言があるだけで,どのような理由なのか,もともとどのような論文だったのかというのを読者が知る機会がないこと.これは一般のポリシーに反するようです.確かにPumMedにタイトルその他が載ってしまうことを考えると,少なくともアブストラクトやどのような理由で取り下げられたのかくらいは知りたいところです.

もう一点は,"This article has been permanently retracted from publication by the authors."というリトラクションの文章を見るのに,雑誌を購読していない人は32ドルを払わなければいけない仕様になっていたことです.購読していない人には,”This article has...",だけが表示されるということですから,実質8語に32ドルを払うことになります.よっぽどのもの好きでなければ払う人はいないでしょう.さすがにこれは編集のミスで,その後に修正されているようです.

論文の不正によるリトラクションでは写真の使いまわしや二重投稿が中心になっていると思います.MBEはそのようなデータはほとんど扱っていないので,リトラクションになる論文は少ないはずです(といってもデータの性質上見つかりにくいだけで,不正がないとは言い切れないでしょう).

敢えて好意的に解釈すると,今回のお粗末な対応は編集者がリトラクションになれていなかったからであると思います.