2010年8月30日月曜日

ミトコンドリアを用いた生物多様性解析

ちょっと前になりますが,進化学会では,生物の多様性を解析する場合には一座位のみを用いた解析では偶然の結果によるバラつきが大きいので,解析する座位数を増やしましょうという話を簡単にさせていただきました.

要は,組み換えが起こらないと,遺伝子の系統の歴史というものは,ある条件で与えられたいくつもの可能な系統パターンの中のたった一つしか反映することができないということです.どのパターンが選ばれるかは過去の偶然によってきまり,今現在どのくらいの個体をサンプルするかには依存しません.サンプル数を増やしても,歴史のサンプル数はたったひとつだということです.この問題は,組み換えを起こしてそれぞれバラバラに継承されている領域を取り,歴史のサンプル数を増やすことによって克服できます.

この点に関してはいくつもの良いレビューがありますが,Ballard and Whitlockのレビューは分子生態学者向けに書かれているので読みやすいのではないかと思います.

もう一つミトコンドリアの解析で気にしなければいけないのは,ミトコンドリアにselective sweepがあるかどうかということでしょう.これは未だに議論の余地があるところですが,基本的なアイデアはGillespieのgenomic draftという,常にselective sweepが起こっていると仮定するモデルです.時間当たり一定の量のselective sweepが起こっていれば,集団サイズが大きいほどより頻繁にsweepが起こり,集団に入ってくる突然変異の量と打ち消しあって集団内の変異量が一定になるというモデルです.BazinらのScienceの論文が有名だと思います.

2010年8月20日金曜日

どうしても打ち間違えてしまう単語

何100回打ったかわからないはずなのですが,"reviewer"という単語を何度やってもミスタイプしてしまいます.スペルミスではなくて手が勝手に間違うようです.

よく考えると"i"と"o"もしばしば順番を間違えて打ってしまうので("statoin"のように)薬指と中指を交互に動かす時にうまくコントロールできていないようです.

試しに,"reviwew"でGoogle検索をしてみたら15,100件,"reviwer"で122,000件がヒットしました.みなさんやっていることは同じようです.

2010年8月11日水曜日

過去を知る

進化学会も無事に終わりました.

僕は割と仮説の検証の妥当性など細かいことを聞いてしまう癖があるので,クレーマーのような印象を与えてしまうかもしれませんが,基本的にはリスペクターです.ただ,どんなに面白い論文でも基本的なことに穴があると残念なので,気が付いたときは指摘することにしています.

最近は紹介できるような新しい論文は見つけていないのですが,いくつか古い論文を読んでいました.分子生物学の分野なら30年前の論文から得られることはあまりないかもしれませんが,進化の分野は古い論文の中にも新たな発見が色々とあります.方法論やデータはものすごい勢いで発展していますが,基本的なアイデアは昔からそれほど変わっていないのです.そこが遺伝学,進化学の醍醐味でしょうか.