2008年2月14日木曜日

本棚: ニッポンの大学

自分が読んだ本の紹介でも始めようかと思います.おもに生物学,進化学に関する一般書,教科書について.試しにいつもお世話になっているAmazonのアフィリエイトを使ってみました.

普段のアクセス数をみる限りはほとんど収入がなさそうですが,たまったらどこかに寄付でもしましょう.アフィリエイトから自動的にチャリティーに入るような仕組みがあれば流行ると思うんですよね.自然に関する本を買って森林保護に寄付するとか,医療に関する本を買って難病の子供に寄付するとか,そういったものがあると良いのではないでしょうか.

というわけで,最初なので軽く新書から.最近はやりの大学本ですが,少し違うつくりになっています.

この本は一言で言うと,「ランキング至上主義に対するアンチテーゼとしてのランキング本」ということでしょう.あえて雑多なランキングを示すことによってランキングの本質に迫ろうという意図があるようです.

内容はトリビア的なものも多く,プロ野球選手を多く輩出している大学やらテレビに対する教授の露出度までいろいろとあります.とにかく,大学ってピンからキリまでものすごい数がありますね.僕は理系の学部がある大学しか知りませんからなおさらです.

さて,この本の主題は達成できているのでしょうか.著者はどこかに真のランキングがあるかのように書いていますが,僕は,ランキングの意味はランキング自体にあるのではなく,ランキングを読む人の側にあると思っています.どんな調査であろうとそれを無批判に受け入れる人には調査というものは何の意味も持たないでしょう.

大学がしょうもないランキングに一喜一憂するのも仕方のないことです.なぜなら,「ランキングが良いランキング=良い大学」と判断するナイーブな人々がいるからです.問題なのはランキングを判断する側であって,ランキングを上げる努力をする方にはないと思っています.

研究者も然り.NatureやScienceなど高いIF(被引用率の指標)の雑誌に出したからってその論文の真の価値が高くなるわけではありません.しかし,研究費を取ってさらに質の高い研究をするために高IFの雑誌に投稿すること,そして掲載されて喜ぶことには何ら悪いところはありません.むしろ,最初からIFの低い雑誌を狙った論文はおのずと質も低くなるでしょう.

ランキングを上げるために切磋琢磨することはよいことであるが,ランキングの良しあしだけで判断するな.もちろん,ランキングを上げること自体が目的になってしまうのは避けるべきですが.


矛盾しているようですが望ましい状態だと思います.判断する方とされる方,両方の努力が必要でしょう.

ニッポンの大学 (講談社現代新書 1920)