2009年8月26日水曜日

イネの遺伝学研究

The ethylene response factors SNORKEL1 and SNORKEL2 allow rice to adapt to deep water

http://www.nature.com/nature/journal/v460/n7258/full/nature08258.html

Loss of Function of a Proline-Containing Protein Confers Durable Disease Resistance in Rice

http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/sci;325/5943/998

色々なところで海外に負けている日本の生物学ですが,僕がいつもすごいと思うのは日本のイネの遺伝学です.今週も立て続けに栽培化に有用な面白い遺伝子が同定されています.ゲノム解読では中国と痛み分けといった感じですが,遺伝学の分野では一歩先を行っているのではないでしょうか.

理由の一つは,これまでコツコツと遺伝マーカーを整備してきたことが大きいこともあります.通常のモデル生物のマイクロサテライトマーカーは良くて数Mbの領域に一つで,有意なマーカーを見つけてもそこから遺伝子までさかのぼるに手間がかかりました.QTL研究はさまざまな生物で行われていますが,遺伝子の同定まで行く例はあまりありません.イネのマーカーは更に細かい単位で配置されているらしいので,有意なマーカーが一つ見つかればそこからは比較的簡単に近傍の遺伝子が決まります.

イネの交配は非常に忍耐が必要な作業に感じますが,そういったことを辛抱強く繰り返す作業から,ゲノム情報を利用して遺伝子を特定し,更にin vitroの実験まで出来てしまう研究のインフラと研究者が揃っているのでしょう.もちろん,他のモデル生物でも多くの遺伝子が同定されていますが,栽培化に関係する遺伝子は実用面で言っても,進化の面で言っても,とても価値のある発見だと思います.