2010年12月20日月曜日

本棚:偶然と必然

年末が近づいてきて忙しい日が続いています.どうせクリスマス休暇でしばらく編集者の机の上に放置されるのでしょうが,年内には投稿したい論文もあります.早く終わらせてすっきりと年を越したいものです.

先日読んだジャック・モノーの一般向け著書について紹介します.順序が逆になりますが,先日のカウフマンの本はかなりこのジャック・モノーの一般向けの本に関連した部分が見受けられます.カウフマンは偶然を強調することが嫌いだったようです.

偶然か必然かというのはなかなか難しい概念ですが,突然変異が偶然で起きることについては間違いなく,偶然であっても長い時間がたてば必然(P≒1)となりうるのかというのが議論になっているのでしょう.我々が観察できる生命の起源がひとつしか無ければその答えを決して知ることはできないのですが,個人的な考えとしてはその確率は天文学的に低いことはないのだろうと思います.ただし,その後の要素については偶然の要素が大きいのではないでしょうか.カウフマンのモデルはネットワークが進化をがんじがらめにしているイメージがありますが,実際の生物はもう少しいい加減に適応度の山を下りたり登ったりしているのだと思います.

今読むと少々古いところもありますが,基本的なところは色あせて無く,いかに生命機能を担うタンパク質の複雑な機能が進化しうるかということが筋道だてて説明されています.

後半の思考や思想の進化についての考察については判断が付きにくいこともありますが,読んでいて面白いことは間違いないです.ドーキンスのミームのようなアイデアを彼がすでに持っていることに気づきます.