2013年5月29日水曜日

前頭葉は大きくない

Human frontal lobes are not relatively large

http://www.pnas.org/content/110/22/9001.abstract.html?etoc

最近更新をさぼっていたのですが,ちょっと目についた面白いPNASの記事を.

細かい技術的なところは専門ではないので無視しますが,著者のグループは量的形質の系統間比較の統計解析を専門にしているところです.

結論としては,ヒトの系統で大脳前頭葉が「相対的」に大きくなっているという一般的なイメージは間違いであるとのことです.もちろんサイズ自体は大きくなっているわけですが.

2013年3月22日金曜日

オオフリシモエダジャクだと思っていた件について

The peppered moth and industrial melanism: evolution of a natural selection case study

知っているようで知らない,オオシモフリエダジャクの工業暗化に関する遺伝的研究のレビューです.

進化の例としてよく教科書に挙げられる例ですが,その遺伝学にはホールデンも注目していました.ポイントを少しだけ挙げてみると.

  • 黒い個体の頻度は増えたのだが,完全に固定はしていない.いくつか説があって,選択圧がそれほど強くない,ヘテロ接合体が有利である,他の集団からの移住率が高い,などによって説明できる.
  • 意外なことに,捕食を逃れるという以外の理由でも黒い個体は生存率が高い.黒い表現型は毒素の代謝などと関連しているかもしれない.
  • 色に関連する座位(carbonaria)は(前に取り上げた)ドクチョウの擬態に関わっている座位と進化的には同じかもしれない.

そろそろ遺伝学的な答えがゲノム解析で明らかになりそうな気がしますが,もしドクチョウとオオシモフリエダジャクで同じ座位が急激な進化に関わっているとすると,とても面白い示唆が得られそうです.

2013年3月8日金曜日

客員教授

遺伝研の客員教授であるAndrew Clark博士が先日まで三島に滞在していました.今年で3年目になり,客員教授としては最後の来訪となります.

有名な教科書を書き,数えきれないほど重要な論文を発表している方ですが,実際にお話をしてみるとそれ以上のすごみが伝わってきます.ゲノム解析,集団遺伝学,分子進化学のどの話題を振ってもすべてに的確な返事が返ってくるのでただただ驚くばかりです.彼のように方法論・技術論から実際の生物学の問題にまでほとんどすべてに精通している人はなかなか見つからないでしょう.

優しげだけれどマシンガンのようなトークと相まって,個人的には偉大なグルであると評させていただきたいと思います.(日本語なので読んでいないと思いますが)3年間どうもお世話になりました.

2013年2月6日水曜日

研究会の終了

遺伝研共同研究集会が無事に終わりました.

最初はこじんまりと行う予定でしたが,いろいろな方々のご協力のおかげで,バラエティあふれる面白い研究集会となりました.

参加されたすべての方にこの場を借りてお礼申し上げます.

3月になるとまたいっぱいゲストが遺伝研を訪れる予定です.

2013年1月31日木曜日

遺伝研共同研究集会

来週の2月4日に共同研究集会を開きます.参加は誰でも自由です.告知が遅かったので外部からの参加は難しいかもしれませんが,遺伝研の方は興味があれば是非ご参加ください.



NIG collaborative workshop: Evolutionary Genetics and Proteomics of Natural Resources in Asia

Date2013/2/4
Place: National Institute of Genetics

Organizers: Chang-Huang Chou
Co-organizers: Tzen-Yuh Chiang, Naoki Osada, Takashi Gojobori


Session 1, Chair: Naoki Osada

13:30~13:40: Opening remarks, Takashi Gojobori

13:40~14:10: Chang-Huang Chou, NCKU, The roles of allelochemicals in ecosystems complexity and human well-being

14:10~14:30: Yoko Satta, SOKENDAI, The tempo and mode of chicken evolution

14:30~14:50: Ya-Chi Lin, NCKU, Genomic study of songbirds

14:50~15:10: Masafumi Nozawa, NIG, Testing co-evolution between miRNAs and their targets in Drosophila species

15:10 ~15:20: Break

Session 2, Chair: Tzen-Yuh Chiang

15:20~15:50: Norihiro Okada, Tokyo Institute of Technology, Fighting fish project

15:50~16:10: Naoki Osada, NIG, Evolution of Rice photoperiod genes

16:10~16:30: Kousuke Hanada, Kyutech, Small open reading frames associated with morphogenesis are hidden in plant genomes

16:30~17:00: Ta-Chien Tseng, NCKU, NCKU Center for Genomic Medicine--Now and Perspective

2013年1月17日木曜日

少し遅れて

気が付けば1月も半分を過ぎてしまいました.ブログの更新も滞ってます.

最近はいろいろとやることが増えてしまって何だかよくわからなくなってきましたが,それでもひとつひとつ片づけていきたいと思います.

最近ではEncyclopedia of Life Sciences (eLS) の記事"Evolution of Gene Expression in Human and Chimpanzee Brains"のアップデートの投稿が終わりました.前の記事が5年も前のものなので,さすがに半分以上書き直さなければならず,なかなかに面倒でした.

マイクロアレイの誕生とともに,これらを用いて霊長類での遺伝子発現の進化を調べる研究が多く行われました.しかし,過去のマイクロアレイを用いた結果のいくつかは最近のRNA-seqのデータでは確認できないので,きちんと検討しなおす必要が出てくるかもしれません.

2012年11月19日月曜日

おめでとうございます

カニクイザルゲノム解析論文の筆頭著者である京大霊長研の東濃さんが,予防衛生協会研究奨励賞を受賞したとのことです.

東濃さん,おめでとうございます.

2012年10月5日金曜日

Retractionの基準

PLOSのブログ記事より

http://blogs.plos.org/speakingofmedicine/2012/09/25/the-role-of-retractions-in-correcting-the-scientific-literature/

PLOS MedicineとPathogenのエディターが最近あったリトラクションの例をあげて次のように述べています.

"We work with authors (through communication with the corresponding author) to publish corrections if we find parts of articles to be inaccurate. If a paper’s major conclusions are shown to be wrong we will retract the paper."

明らかな不正があった場合は議論の余地はありませんが,著者の意図に反する不幸なエラーがあった場合に必ずしも論文を取り下げなければいけないかは判断が難しいところです.

あげられているXMRVというウィルスの例では,ラボでのコンタミが原因だったということで取り下げになりました.社会的なインパクトも大きくかつ原因がお粗末な場合はリトラクションは仕方のないことかもしれませんが,単なる間違いの論文をすべて取り下げるような表現はどうかと思います.

個人的には,間違いの程度によっては訂正記事もしくは論文を載せれば十分で,必ずしも記録を抹消しなければいけないことはないのではと思います.間違いを決して認めない著者が有利になるだけではないでしょうか.

訂正記事があったときに,別のジャーナルであってもわかりやすい注釈がつくようなシステムがあればよいのですが.

2012年10月4日木曜日

読んだのか?

実に2469本の論文が引用されているレビューです.どこかに世界記録があるのでしょう.

http://www.biomedcentral.com/1755-8794/2/2


2012年10月2日火曜日

本棚:JBSホールデン

両方ともかなり古い本ですが,かの有名なホールデン先生に関する本です.一冊は伝記,もう一冊は一般向けの生物学に関する話題を集めたものです.

一般向けの本のほうは今となっては取り立てて面白いところは無いのですが,内容は非常にわかりやすく,生命科学について,進化についてまとめられています.その一方,伝記の内容はすばらしく濃いです.そして長いです.

彼の半生については断片的に聞きかじって知っていたのですが,おそらくこれ以上詳しい伝記は見つからないのではと思います.遺伝学者としてのホールデンだけでなく,自己犠牲的な人体実験,戦争での勇敢さ,権力との戦い,共産主義への傾倒などの事柄が時系列に沿って仔細に述べられています.彼の本質は何だったのかというといろいろと疑問もわいてきますが,一人の人間がこれだけ波乱万丈の人生を送られるのかという驚きがあります.