2007年8月23日木曜日

革新と科学

Natureの記事
http://www.nature.com/nature/journal/v448/n7156/full/448839a.html

アメリカに行って驚いたことは,基礎科学にかなりの重点が置かれていたことです.それまではぼんやりと,西洋的な科学は功利主義的なものだと思っていました.実際には,基礎科学の重要性は先進国ほど理解されているのではないでしょうか.

しかし,科学にかけるお金は経済的な事情が大きいようです.アメリカのここ20年は景気も良く,基礎科学にも十分なお金が支払われてきました.しかし,これからは基礎科学予算が削られていくだろうという不安が研究者の間で広まっています.現に,イラク戦争のツケが今年度のグラントには回ってきていて多くのラボが資金難に陥っているという話をよく聞きます.こうなると,科学に対する評価(予算)は基礎的なものよりも直接的に役に立つ研究に偏っていくでしょう.イギリスでは既に方向性の転換がみられているとのことです.

このタイトルを読んで初めて知ったのですが,innovationとは産業に結びつくという意味が暗黙的に込められているんですね.一見,innovationとscienceは対立関係にはなり得なさそうですが,英語では違うようです.

こういった問題には色々な意見があると思いますが,税金を払う人の立場で考えてみても良いかと思います.すぐ役に立つ研究よりも,知的好奇心を満足させてくれるような発見.こういったものに研究費を使って欲しい国民もいるでしょう.そのためには一般的な科学知識の啓蒙活動を行うことも重要であると思います.寿命の延長よりも精神世界の豊かさを求める人もいるし,少なくとも僕にとっては精神世界の満足度は自然に対する理解によって深まっていると言えます.

最後にこの引用を.

"Researchers have at least two weapons that they should keep well honed: a compelling historical narrative showing the unpredictable paths from science across all disciplines to economic and other benefits; and a demonstration that those best-placed to innovate on the basis of science — and, in turn, to stimulate scientific ideas — are well set up to do so."