2013年3月22日金曜日

オオフリシモエダジャクだと思っていた件について

The peppered moth and industrial melanism: evolution of a natural selection case study

知っているようで知らない,オオシモフリエダジャクの工業暗化に関する遺伝的研究のレビューです.

進化の例としてよく教科書に挙げられる例ですが,その遺伝学にはホールデンも注目していました.ポイントを少しだけ挙げてみると.

  • 黒い個体の頻度は増えたのだが,完全に固定はしていない.いくつか説があって,選択圧がそれほど強くない,ヘテロ接合体が有利である,他の集団からの移住率が高い,などによって説明できる.
  • 意外なことに,捕食を逃れるという以外の理由でも黒い個体は生存率が高い.黒い表現型は毒素の代謝などと関連しているかもしれない.
  • 色に関連する座位(carbonaria)は(前に取り上げた)ドクチョウの擬態に関わっている座位と進化的には同じかもしれない.

そろそろ遺伝学的な答えがゲノム解析で明らかになりそうな気がしますが,もしドクチョウとオオシモフリエダジャクで同じ座位が急激な進化に関わっているとすると,とても面白い示唆が得られそうです.

2013年3月8日金曜日

客員教授

遺伝研の客員教授であるAndrew Clark博士が先日まで三島に滞在していました.今年で3年目になり,客員教授としては最後の来訪となります.

有名な教科書を書き,数えきれないほど重要な論文を発表している方ですが,実際にお話をしてみるとそれ以上のすごみが伝わってきます.ゲノム解析,集団遺伝学,分子進化学のどの話題を振ってもすべてに的確な返事が返ってくるのでただただ驚くばかりです.彼のように方法論・技術論から実際の生物学の問題にまでほとんどすべてに精通している人はなかなか見つからないでしょう.

優しげだけれどマシンガンのようなトークと相まって,個人的には偉大なグルであると評させていただきたいと思います.(日本語なので読んでいないと思いますが)3年間どうもお世話になりました.