2008年12月31日水曜日

論文校正

12月30日に北海道の実家に帰省したわけですが,ゆっくり休む暇もなく一通のメールが.

アメリカでは年末休みはないせいで,12月30日に論文の校正依頼がきてしまいました.こういうのは大体48時間以内に返事をしないといけません.ひどい話です.

数式が間違っていたり,引用文献が一つ抜けていたりと色々とヘマをやったおかげで,修正にめちゃくちゃ時間がかかってしまいましたがなんとか終了.こんな時期なので共著者に電話をかけて確認するわけにもいかず,あぶなく徹夜するところでした.

最近印刷された方の論文は,最終校正がなかったために,色々と細かいミスがあったのがあとになってわかりました.訂正版を出すほど致命的なものではないのですが,ちょっとした間違いを見つけるたびにヒヤリとします.

2008年12月26日金曜日

仕事納め

今年は27,28日が土日なので,今日が正式な仕事納めです.

今年の出来は割と良かったと思います.共同研究もたくさんすることができ,色々知り合いが増えたのも良いことです.来年も手を抜かずに頑張りたいところ.

ちなみに,来年から台湾の成功大学で非常勤ですが准教授を務めることとなりました.ちょっと手を広げ過ぎているような気もしますが,今のところなんとかなっているようです.

2008年12月18日木曜日

本棚:Handbook of Human Molecular Evolution

Handbook of Human Molecular Evolution

ヒトの分子進化に関する教科書です.いわゆる分子進化だけではなく,集団遺伝学やゲノム解析,遺伝子発現と扱っている内容は多彩です.冗長でまとまりがないところもありますが,これまでにないくらい野心的に色々な内容の項目を集めているので,知識を広げたり頭の中を整理するのには良いでしょう.

ちょっと個人で買うには高すぎるし,すべて読むのが不可能なくらい分厚い本ですが,学生さんの勉強用にはとても良いのではないでしょうか.僕もヒトとチンパンジーの遺伝子発現の違いについて1セクションだけ書かせてもらっているので宣伝だと思われかねませんが,分子進化やヒトの進化を研究するラボなら一冊あっても良い本だと思います.



2008年12月17日水曜日

ペーパーレス計画

大したことではないのですが,年末に向けてこれまでたまった論文の整理をし始めました.アメリカから段ボールに詰めて持ってきたものもたくさんあります.

いい機会なので,PDFがあるのについつい紙に印刷してしまう癖をやめようと思います.そのために,キャビネットいっぱいにたまったここ5年くらいの論文の束をチェックして,PDFがPCに保存されているものについては処分しました.

ついでにEndonoteの体験版を入れて論文データとPDFをリンクさせる作業を暇なときに続けています.今後はPDFファイルのある論文はできるだけ紙に印刷しないようにしようと思っています.

ところが,解析中のデータの図をペタペタ壁に貼りまくることはやめられません.何かの映画で,犯罪心理捜査官が自宅の壁やら風呂やらに殺人現場の写真を貼りまくるシーンがありましたが,そんな感じで図を印刷して周りに貼りまくっています.データに囲まれて生活しているとある時ふといいアイデアが浮かんだりするから不思議です.あとは忘れてほかしてあった仕事を思い出したり.

コドン表とアミノ酸の一文字略字もよく忘れてしまうのでいつも壁に貼っているのは内緒です.

2008年12月16日火曜日

全ゲノムSNPのPCA解析

近頃の技術の進歩により,一度の実験で200,000~500,000程度の個人のSNPを安価に決められるようになりました.それらのデータから人類遺伝学的な考察を行うために最近盛んにつかわれている方法が主成分分析です.

もちろん,主成分分析(PCA)自体は多次元データを直感的に理解するための古典的な手法で,集団内のサンプルを階層化する目的でつかわれてきました.が,それをヨーロッパのサンプルにあてはめた時の論文が衝撃的でした.第一主成分と第二主成分を使ってデータを2次元平面上に落とし込むと,個人の分布が地図とピタリと重なります.

同じ方法で日本人のサンプルを解析した論文もありますが,今回のPLoS ONEの論文ではより広いアジアのサンプルを扱っています.相変わらず美しい絵です.

一連の解析でわかる重要なことは何でしょうか.もちろん,個人の出生地をかなりの割合で推定できる,ということは重要なことでしょう.さらに,「距離による隔離でヒトのランダムではないSNPパターンはほとんど説明できる」ということがあるかもしれません.

ただ,主成分分析の性質を理解したうえでこのことを議論しないといけないでしょう.主成分と地図が一致したのはやってみたらたまたまそうだっただけであって,理論的根拠は少ないのです.移住率の偏りとか遺伝子にかかる淘汰などによってこのパターンがどのように変わるのか,第三主成分以降に含まれている情報は何なのか.色々と検討すべきことがあるのではないでしょうか.

2008年12月16日追記

「距離による隔離でヒトのSNPパターンはほとんど説明できると書いてしまいましたが,たぶん不正確なので少しいじりました.

余談ですが,こういった研究は非常に面白いと思いますが,僕は主成分分析はあまり好きではないのです.主成分分析はデータからヒストグラムを書いて眺めてみるのを高級にしたような感じで,記述的な印象があります.もちろんデータの記述は重要な要素ですが,そこから先にもう一歩欲しいと思ってしまいます.


2008年12月17日追記

このブログでは図版についての版権はきちんと守ろうと努めています.PLoSシリーズの素晴らしいところは,論文の図もパブリックドメインになっていることです.逆に,PLoSに投稿する場合にはその図がどこからかパクッたものではないことが求められます.

2008年12月14日日曜日

BMB2008(了)

分生に出てきました.業務で行っているバイオリソースの宣伝で忙しかったのですが,久しぶりに会うことができた方もたくさんいて楽しめました.

若者の発表が非常に多いので,学会に出るたびに自分が年をとっていくのを感じます.会場も広く歩きまわるだけでもなかなか大変な学会ですが,なんだかんだ言って熱心な人は要旨集を見てきちんと発表に来てくれるようです.

さて,年の瀬も近づいてきてバタバタしています.一日に二本も論文投稿してみたらオンラインの投稿サイトが不調でスタックしたり,別の共著の論文がリジェクトされたので次の雑誌を探したりと大忙しです.

とりあえず週が明けて一本はアクセプト,共著の一本は9割通る感じのマイナーリビジョンで帰ってきましたので,安心して年は越せそうです.

2008年12月3日水曜日

過去の記録

2002年に渡米するときに,実験のデータやら教科書やら,諸々の書類は実家のほうに預けていたのですが,暫く行方不明になっていました.先日やっと発見され,こちらに送ってもらったところ色々と懐かしいものが.

初めて投稿した論文に関するレターも見つかりました.当時はまだオンライン投稿がなかったので,郵送でアクセプトの通知を受け取った時は嬉しかったものです.E-mailだとあのドキドキ感はないですね.読み返すのも嫌なくらいしょっぱい論文でしたが,原稿からエディターとのやり取りまでほとんど一人でやったので,アクセプトの時はとても嬉しかったのを覚えています.

他にも,修士論文のコピーが出てきました.僕は修士の時は手探りで実験に明け暮れていて,何をやったのかもほとんど覚えていなかったのです.久しぶりに読み直してみると,今では陳腐な内容も含まれていますが,当時としてはデータも豊富でなかなか頑張っています.惜しむらくは英語の原稿まで練習がてらに書いてみたものの日の目を見ることがなかったことでしょうか.もう少し統計をきちんとやっていれば,マイナーな雑誌には載ったクオリティでしょう.図などをスキャンしておいたので機会があったらウェブに晒したいと思っています.