2008年8月29日金曜日

本棚:数値で見る生物学

ゾウの脳の重さ(4925g)からポップコーンの重さ(80-130g/1000粒),ブロンドの人の髪の毛の本数(150,000本)まで,古今東西様々な生物の数値に関するデータで埋まっています.

暇な時にパラパラとめくってみるとそのたびに新しい発見があるでしょう.最近はインターネットで色々なとリビアを知ることができますが,ネット上にすらない情報もたくさん存在します.

こういったトリビアを知ることに喜びを見出さない人が読んでも全く面白くない本ですが,きちんと参考文献が載っているので,研究の際にも実用的です.

書いているのはドイツ人.なんとなく納得がいきます.

数値でみる生物学

2008年8月25日月曜日

進化学の懐の深さ

学会は日曜の夕方まででしたが,最近疲れ気味なので月曜日に代休を取ってゆっくり帰ってきました.が,東海道新幹線が大雨で大幅に遅れたために駅で立ち往生するはめに.結局結構疲れてしまいました.誤算です.

進化学会の方は,新今西の人が大声で叫んでいました.自説を主張するのは構わないのですが,紳士的に質問できないのはいただけないですね.

ある程度シニアの研究者なら適当に受け流せるでしょうが,せっかく一生懸命発表の準備をしてきた学生さんに対して,「あんたね!そもそもダーーウィンはねっ!」なんてのは可哀そうでしょう.まっとうな発表の進行もさえぎっているし,あちこちで問題を起こせば除名されても仕方ないかと.

しかし,それでも普通に出入りさせている進化学会の懐の深さに感動です.進化学の懐の深さは貴ノ浪以上.

2008年8月20日水曜日

本棚:フェルマーの最終定理

最近になって文庫本が出たようなので紹介いたします.

一度は名前を聞いたことがある数学の定理,それが最近になってある数学者に解かれるまでの仮定をドラマチックに描いた作品です.こういった分野は数学でも数論という分野に入るのですが,ピタゴラスの時代からの数論にまつわる話題を絡めながら,問題解決までの長い道のりが非常に読みやすくまとめられています.

数学者というと我々自然科学者から見ても遠くにいる存在ですが,彼らの考えや研究生活が生き生きと伝わってくるところが面白いです.また,こういった一見単純そうな定理であっても,沢山の人が少しずつ少しずつ回り道をしながら最終的な証明に近づいてきたというのが良いところです.

証明過程に日本の数学者が深くかかわっていたところは全く知らなかったことなので勉強にもなりました.数学だけはもっと大学で勉強しておけばよかったと今になって悔やんでいます.

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

2008年8月19日火曜日

遺伝子ドーピング

なんだかんだ言ってちょくちょく見てしまった北京オリンピックですが,遺伝子ドーピングという言葉を聞いたので調べてみました.

どうやら身体能力を向上させるホルモンなどのタンパク質をコードしたベクターを体内に注射することを指しているのですが,うーん,本当にやってるのかなぁというのが感想です.ベクターを調整するのにも大がかりな研究設備が必要ですし,そもそもどれだけメリットがあるかわかりません.また,発がん性などのデメリットも考えられるでしょう.そんなに効くんだったら,今頃は臨床での遺伝子治療がもっと普及しているに違いありません.

しかし,オリンピックに絡む市場の大きさを考えると,やれるものは何でもやってしまう人がいないとも限りませんね.

と,考えていくとドーピングの定義とは何でしょうか?

現在は競技が行われる時点で薬物検査が行われ白黒が付けられますが,たとえば成長期の間にずぶずぶに薬剤を与えられて異常な発達をした人は,競技の時点で薬剤が検出されなければOKなのでしょうか.酸素カプセルも一時期問題になりましたが,微妙なところですね.

常識的に考えろと言われると終わってしまいますが,実際のドーピングの定義は,「禁止リストに載った行為を行う」ことのようなので,万人を納得させる定義はないようです.

2008年8月18日月曜日

予定外の帰郷

夏休みは9月に取る予定だったのですが,先週に北海道の祖母が他界したので帰郷してきました.

春先に末期がんの宣告を受けていたので覚悟はしていたのですが,極度の病院嫌いのために一切の治療や通院を拒否して自宅で往生したとのことです.我が祖母ながら頑固すぎる終わり方です.自分だったら痛み止めくらい打ってもらいたいと思いますね.

と,バタバタしているうちに今週末は進化学会です.駒場キャンパスは何年ぶりでしょうか.シンポジウムで話しますが,前回の中立進化論の時からは少し進歩させました.とはいえまだ自分でもなんだかなぁというできなので,ほかの部分でなんとか興味の引ける話ができればと思います.

タイトルは,

Deleterious Mutations and Human Diseases: Genomic Perspective.

病気の遺伝子の進化に関する研究です.こういった話はよもやま話になりがちですが,だからこそできるだけカチッとした解析をしたいなと思っています.カチッとしすぎると数式が並んでみんな寝てしまうので,発表はできるだけ面白くやりたいのですが.

医学と進化という話になると,ダーウィン医学という言葉が一番にあがると思います.好きな話ですが,これから先もっと応用に役立つような方向性はあるのでしょうか.知の追及なのか,実用を目指すのか,どうも中途半端な印象があります.これからゆっくりと考える題材としてみたいです.

2008年8月5日火曜日

iPS細胞研究

所属する研究所で新たに組織されたiPS・幹細胞創薬基盤研究プロジェクトというものに併任されました.少々畑違いな分野ですが,トランスクリプト解析などでお手伝いできないかと思います.

iPS細胞については世間で色々騒がれていますが,再生医療への応用にはまだまだ時間がかかるでしょう(根本的に無理だという意見もありますが).ただ,それ以外のアドホックな用途によっては使い道はあると思います.個体差を考慮した創薬のスクリーニングや疾患患者由来の細胞なんかは治療法の開発に役に立つでしょう.

ヒトの組織が分化するに従って,表現型に現れる個体差というものは大きくなると予想されます.そういうのがしっかりと見られると面白いのではないかと思っています.

2008年8月4日月曜日

集中講義

Arabidopsisについての研究を行っていることは以前書きましたが,そろそろ論文にまとめるかという話になっています.

すると,共同研究者である植物学者から大量の論文リストが送られてきました.合計85本.僕は植物の系統自体は素人に近いので,論文を書く前に全部読めということなのでしょう.

これだけ一気に読めばある程度の体系的な知識は身に付きそうです.