2014年10月9日木曜日

citationとquotation

citationとquotationとは英語では違う意味を持ちますが,日本語では「引用」という訳語しか一般に使われていません.そのため色々な誤解が出てくるようです.

英語でquotationとは,ある発言や文章をありのままに引用することです.quotation mark(”)で囲ったり,ブロックを使って引用します.この場合,もとの文章を勝手に変えることが許されなかったり,中略するときは「...」を使わないといけなかったりと色々ルールが厳しいです.自分が言ったこと,書いたことが勝手に改変されて世間に広まるのは様々なトラブルを生みますので,このような厳しいルールがあるのだと思います.

これに対して自然科学論文の多くではcitationという言葉が使われます(indirect quotationという呼び方もあるらしいですが).この場合は,誰かが言ったこと,書いたことをある程度要約して言い直すことができます.引用元を明記するのがルールですが,それ以外の細かいルールはありません.ただ,この時にもとの文章をまるまるコピー(若しくは若干改変)しただけだと,今度は文章の著作権に引っかかります(いわゆる剽窃).引用をすれば文章をコピペしてもOKという誤解はここから発生しているのだと思います.

問題なのはこの二つがしばしば同じ「引用」という言葉で表されていることでしょうか.厳密には前者を「直接引用」,後者を「間接引用」 と呼ぶらしいですが,一般的にあまり聞いたことはありません.論文の引用はreferenceという言葉もあるので,「参照」という言葉の方がしっくりくると思うのですがどうでしょう.