2017年6月16日金曜日

Cis- and Trans-regulatory Effects on Gene Expression in a Natural Population of Drosophila melanogaster

先日のG3論文に続き,首都大学東京の高橋先生らとの共同研究の成果をGenetics誌に発表しました.

遺伝子発現の進化がどのように起こっているかを知ることを目的に,ショウジョウバエを用いて特殊な交雑システムを作り,発現に直接影響を与えるcis変異と,間接的に影響を与えるtrans変異の効果を定量しています.

また,トランスポゾンの挿入が周囲の遺伝子の発現に影響を与える現象が,卵巣において特に強く見られたことにより,生殖細胞におけるトランスポゾン活性の制御が,周辺の遺伝子の発現に二次的に影響を与えていることが示唆されました.

Cis- and Trans-regulatory Effects on Gene Expression in a Natural Population of Drosophila melanogaster

2017年5月31日水曜日

生命情報解析学テキスト

現在学部生に行っている講義,生命情報解析学のテキスト資料を公開します.

まだまだ未完成なところや勘違い・間違いなどあるかと思いますが,バイオインフォマティクス,遺伝学,ゲノム科学などの基本的なところから勉強を始めるために,少しは役立つのではないかと思います.実際の授業ではこの半分以下しか教えられていません.

こういったものはいつまでたっても未完成なので,とりあえず前半部分を公開します.前半部分が基礎的な内容になり,後半がより応用的な内容になっています.インターネットで公開するにあたっては,図版の著作権が重要になってきますので,フリーライセンスまたは再配布が許可されたものだけを使っているつもりですが,お気づきの点があれば指摘いただければと思います.

PDFファイルはこちらのページで公開しています.

2017年5月30日火曜日

A generalized linear model for decomposing genetic, parent-of-origin, and maternal effects on allele-specific gene expression

今年修士を卒業した高田君が行った仕事がG3誌で公開されました.

A generalized linear model for decomposing genetic, parent-of-origin, and maternal effects on allele-specific gene expression

Reciprocal cross(正逆交雑)された個体間のアリル特異的遺伝子発現をみることにより,ゲノムインプリンティングによる遺伝子発現への効果を検証する研究が行われてきましたが,本研究ではそれに加えて,cis制御による変異の効果と母親の遺伝子型の違いによる母系効果を同時に推定する方法を考えたというものです.

G3誌はGenetics誌を発行するアメリカ遺伝学会が発行しているもので,PLOS ONEなどと同じく,メガジャーナルと呼ばれるものの一つです.

2017年2月7日火曜日

本棚:サピエンス全史

久しぶりの更新,しかもお正月休みに読んだ本の話で自分の怠慢さがよくわかります.

さて,この本は色々なメディアで取り上げられたようですが,一点だけ遺伝学者として指摘しておきたいところがあります.冒頭の方で,われわれホモ・サピエンスはただ一人の祖先に行き着く,といったような表現がありますが,これはよくある誤解です.

ゲノムに組み換えがなければミトコンドリアのように一つの共通祖先(所謂ミトコンドリア・イブ)にまでルーツを遡ることができますが,ゲノムには組み換えがあるので,異なったゲノムの場所は異なった共通祖先をもちます.したがって,我々のゲノムの祖先は一人に帰することは無く,無数にいると考えてよいでしょう.

そのほかの部分はとても楽しく読めた本でした.作者独自の視点が心地よく,いつもと違った観点から人類の歴史を眺めることができるでしょう.