久しぶりの更新,しかもお正月休みに読んだ本の話で自分の怠慢さがよくわかります.
さて,この本は色々なメディアで取り上げられたようですが,一点だけ遺伝学者として指摘しておきたいところがあります.冒頭の方で,われわれホモ・サピエンスはただ一人の祖先に行き着く,といったような表現がありますが,これはよくある誤解です.
ゲノムに組み換えがなければミトコンドリアのように一つの共通祖先(所謂ミトコンドリア・イブ)にまでルーツを遡ることができますが,ゲノムには組み換えがあるので,異なったゲノムの場所は異なった共通祖先をもちます.したがって,我々のゲノムの祖先は一人に帰することは無く,無数にいると考えてよいでしょう.
そのほかの部分はとても楽しく読めた本でした.作者独自の視点が心地よく,いつもと違った観点から人類の歴史を眺めることができるでしょう.