Comprehensive phylogenomic analysis reveals a novel cluster of simian endogenous retroviral sequences in Colobinae monkeys.
今年の4月に修士を卒業した池田君が中心となって作業を行った,SERV(サル内在性レトロウィルス)の分子進化に関する研究です.Vero細胞ゲノムのなかにあるSERV配列については,以前の記事で触れていますが,その発展として,国立感染症研究所との共同研究として行ったものです.
旧世界ザルはオナガザル亜科のサルとコロブス亜科のサルに細分化されます.SRVとSERVの研究はこれまで主にマカクザルを材料に行われてきましたが,いくつかの旧世界ザルゲノム配列を調べてみると,これまであまり調べられてこなかったコロブス亜科のサルのゲノムに多数のSERVが存在し,マカクなどのオナガザル亜科にみられるSERVよりも,外来性のSRVに近縁であることが分かりました.
また,感染に重要な役割を果たすenvタンパク質を見てみると,コロブスがもつSERVはオナガザルがもつSERVよりも,機能に重要なアミノ酸が保存されていることが分かりました.コロブス亜科のSERVは今後,SRVの研究を進めるにあたって重要な役割を果たすことになるかもしれません.