2010年6月8日火曜日

難産だったがそれもよし

ながいこと揉めていた論文がThe New Phytologistという雑誌にようやく通りました.植物学雑誌の中ではわりと有名なようで,生態から分子まで幅広く扱っています.

Multi-locus analysis of genetic divergence between outcrossing Arabidopsis species: evidence of genome-wide admixture
Wei-Kuang Wang, Chuan-Wen Ho, Kuo-Hsiang Hung, Kuo-Hsiung Wang, Chi-Chun Huang, Hitoshi Araki, Chi-Chuan Hwang, Naoki Osada, Tzen-Yuh Chiang.

内容は他家交配をするArabidopsisの種間交雑の遺伝子解析についてで,長らく台湾のグループと進めてきた共同研究です.使っていたサンプルが台湾にだけいる特別なものだと気付くのに時間がかかり,紆余曲折の末にまとまった感じです.

個人的なポイントとしては,マルチローカスデータから得られた遺伝子系統樹の分布が,種の系統樹と一致するかどうかのexactなテストを開発できたところがあります.Gene flowとincomeplete lineage sortingを分子データから区別するのは難しく,最近論文に書いたサルの雑種の問題のように,2種だけの単純なモデルでもたくさんのデータを使ってヘビーな計算をしなければなりません.種が多い場合にはこういった単純な方法の方が効果的だと思います.

最近の論文はequaly contributedとかco-corresponding authorとかが多く感じます.中国だったかの論文で,3人equal contributionで2人co-correspondingというのも見たことがあります.実はあまり節操がないので好きではないのですが,自分にオファーが来た場合は特に断る理由はありません.来るもの拒まずでco-corresponding authorとなっています.

また,今回の論文で密かな野望が達成されました.シカゴ大学に留学していた時には同じデパートメントに在籍した日本の方に色々とお世話になりました.現在はそれぞれバラバラに研究を続けていますが,分野は同じなので,たまに集まってお互いの研究を知らせ合っています.今回の論文で,3名それぞれと共著を持つことができました.持つべきものは仲間です.

一見不純な動機ですが,統計のBox-Cox検定もBoxさんとCoxさんがノリでコラボレーションしたということですから,そういったノリも案外馬鹿には出来ません.