少し前の論文ですが,今週に遺伝研内で行っている論文読みで担当することになりましたので,ついでにその紹介をさらりと.
以前のエントリーで少しふれましたが,Denisovaというところで見つかった4万年前の化石,ミトコンドリアを調べた限りではかなり古い分岐を示したということですが,核ゲノムを見たところ恐らくネアンデルタール人との姉妹群であろうということです.更に,この集団からメラネシアの人類集団への遺伝子の流入のパターンが見られたそうです.
この論文の良いところ(逆に弱点かもしれませんが)は,複雑になりがちな集団遺伝学的解析を簡単な統計量を用いて結論だけを示しているところです.われわれはつい複雑なモデルを立ててパラメータの推定なんてことをやってしまいがちですが,証明したいことを単純にかつストレートに示す,ということは重要なのかもしれません.とはいえ,大事な要素を単純化しすぎるあまりに結果に思わぬ偏りが出てくることも否定はできませんが.
なんにせよ,これらの研究でわかってきたのは,人類の進化は一度の出アフリカで簡単に説明できるほど単純ではなかったということでしょうか.とはいえ,全体としては遺伝子流入があった量としてはかなり少ないので,かつて提唱された極端な多地域進化説(現生人類は地球上のそれぞれの地域で変化を遂げた)が復活するようなことはないと思います.