Natureの記事です.
アカゲザルのゲノム配列はずいぶん昔から大体は決まっていましたが,研究に使われた個体はメスだったので,Y染色体については解読がされていませんでした.
そこでY染色体の配列を決めたところ,ヒトとアカゲザルのY染色体上の遺伝子は比較的よく保存されていて,Y染色体ができてから起こった急速な遺伝子の脱落は止まっているようだということです.また,ヒトやチンパンジーのY染色体は巨大な反復配列があったりして複雑な構造を取っているのですが,そういったものは少ないそうです.
Y染色体から遺伝子がなくなっているのを見て,よく「そのうち男はいなくなる」といった誤解がされているようですが,別にY染色体がなくなっても性決定システムがなくなるとは限らないので,そういった心配をする必要はないかと思います.ただ,Y染色体にはsexual antagonismにより「男らしさを決める遺伝子」が残っているという説もあります.
研究者としては,アカゲザルのY染色体が読まれていないのは困ったことでしたので, 解析された配列はヒトのゲノム進化を知る良いリソースになるのではと思います.