11月13日に故木村資生先生が亡くなられて20年,生まれて90年を記念するシンポジウムが遺伝研で行われました.多い時で120名近くが参加されたということで,非常に盛況なシンポジウムでした.
すでに20年前に亡くなられていますので,生前の木村先生を知る研究者は若くても50代となります.これまでいくつもの興味深いエピソードをうかがってきましたが,新たに知ったことも多く,日本の集団遺伝・分子進化研究の歴史を知るいい機会になりました.
僕の研究発表では,過去の研究のうち,中立説「以外」で木村先生の研究に深く関わるものを2つほど取り上げて発表させてもらいました.中立説のインパクトが強すぎるために,中立説以外の木村先生の仕事はしばしば忘れられがちですが,そこを少しでもうまく掘り下げられればと思っていました.
一つは,任意の優性度における集団中の遺伝子頻度と固定確率について.これをきちんとした形で示したのは木村先生の大きな仕事の一つだと思います.もう一点は,二つの突然変異が互いに有害な効果を補完しあう「補完的進化」の研究です.後者については以前のエントリーで詳しく説明しています.