2008年7月10日木曜日

オープンアクセスの展望

霊長類学会の発表が終了.次は遺伝研で行われる「中立進化論の現在」という研究会で発表いたします.まだ手探りの段階の研究なので,色々と意見をいただきたい内容です.

さて,先日のNatureのNewsでPLoSシリーズに対する記事が載っていました.かなり挑戦的な内容なので,案の定色々とコメントが付いています.

http://www.nature.com/news/2008/080702/full/454011a.html

そもそもPLoSシリーズとは,Natureなどの商業誌に対抗して,投稿者が一定の額を負担することによって論文の内容に誰でもアクセスできるシステムを作ろうというのが目的です.しかも一流のものを作ろうと.インパクトファクターの方は順調に推移しており,2007年のものは,

PLoS Biology - 13.5
PLoS Medicine - 12.6
PLoS Computational Biology - 6.2
PLoS Genetics - 8.7
PLoS Pathogens - 9.3

となかなかのハイレベルを維持しています.

Natureの記事の要点は,

一流の雑誌を維持するのにはお金がかかるので,PLoSの経営はこれらの雑誌の掲載料だけでは赤字である.

PLoS ONEというアクセプト率をあげてクオリティーの低い雑誌の掲載料でコストを補っている.

ということです.本来の意図はともかく,もともとクオリティーの低い論文を集めるなんて意図はPLoS ONEにはないわけですから,PLoSの編集者にとっては言いがかりもいいところでしょう.編集者直々のコメントも多数ついています.

とはいえ,PLoS ONE自体は玉石混合でとても良い論文もあればそうでないものもあり,クオリティーは一定ではありません.コメント機能が活かされていないのも当初の予想からは大きく外れているでしょう.

そういった雑誌の特性をちゃんと把握して投稿している人が良いのですが,PLoSという名前に釣られてPLoS ONEに投稿した人は,おそらくそれほど高くならないだろうインパクトファクターにがっかりして今後の投稿を敬遠するかもしれません.そういった投稿がなくなった場合にはたして現在の財政状況を維持できるのか.

せっかくトップの雑誌の評判は良いのですから,財政破綻で雑誌廃刊なんてのはやめてほしいですね.財政破綻をしたら,Scienceあたりが買い取ってくれるかもしれませんが...



本日はもう一本NatureのNewsを紹介.ナイスガイをフィーチャーしたエッペンドルフのオートピペットシステムのプロモーション映像についてです.

http://www.nature.com/news/2008/080709/full/454149a.html

Youtubeの映像はこちら.It's Called epMotion


こんなイケメン揃いのラボがあったら女子の進学率も増えるでしょう.