2010年12月8日水曜日

本棚:自己組織化と進化の理論

最近は有名だけど読んでいなかった一般向けの本を何冊か読み進めています.

で,今回感想を書くのは,いわゆる複雑系の研究者であるカウフマンの代表的著作です.彼の仕事についてはNKモデルなんかは軽く勉強したことはありますが,まともに本を読んだことはありませんでした.

内容は一部哲学的ですが,非常にわかりやすくネットワーク理論の基本について説明してくれています.また,生物から文化に至るまでの彼の進化論的解釈は読み物としては面白いと思います.

ただ,彼の主張である自己組織化の進化における役割については今一つ理解できないところがあります.

彼は自己組織化の力が秩序を作り出しているといい,例えば自然界では水滴とかそういったものに形が表れているといいます.しかし,僕にとってはそれはやはり物理的な力でしかなく,進化を考える時に果たしてそれが重要なのかについては疑問が残ります.

例えば,水が無かったら生物が進化しなかったからというのを,「ダーウィン以来科学者は自然選択しか考えてこなかったが,自然選択だけではなく水が大事なのだ!」,と言っているだけのような気がするのです.たぶん彼の考えはもっと深いところにあるのは伝わり,なんとなく言いたいことはわかるのですが,なかなか判断が難しいところにあります.

生命の起源についての彼のモデルは,ありえないこともないが,本当かなという印象です.結局,生命の起源の研究というのは現在地球上に存在する生物を見ただけではサンプル数が1なので想像の域を出ないのではないかと思います.先日リンの代わりにヒ素を使う面白生物が見つかりましたが.DNAとは全く違う遺伝物質を持つ地球外生命体がいくつか見つからない限り,科学的な検証は難しいのではないかと思われます.