所謂ポストモダン主義といわれる思想,学派が如何に適当に自然科学の概念を使っているかということを丁寧に解説している本です.進化学などは攻撃を受けることが多い立場なのですが,反対者がこういった立場をとってくることもしばしば見受けられます.
面白い本ですが,さすがに途中の部分は読むのがつかれます.何故ならこの本は引用がかなり多く,もともとまともな意味をなさないとわかっている難解な文章をかなりの分量読まなければいけないからです.難解であるが頑張って読めば意味が分かる文章を根気よく読むのは大切なことですが,意味がないとあらかじめ知らされているものを読むのは相当な苦痛です.
この本の攻撃対象はポストモダン主義ですが,「知の濫用」という面においては我々科学者も色々と考えなければいけないところがいくつかあると思います.難しいことを言っているようで何も言っていない文章,専門用語の濫用,アナロジーに基づいた厳密でない考察などは,大学の先生が書いた著作(多くは一般向けの本ですが)においても数多く見ることができます.
また,専門分野の論文にもナンセンスなものがかなり紛れ込んでいます.査読というプロセスがかなりのフィルタリング機能を持っているのは確かですが,ソーカルの例の通り,いい加減な論文が有名な雑誌に載ってしまうこともあります.どうやって本物と偽物を見抜くことができるのか,簡単な方法はなく,我々は常に自分で納得するまで読み込むか,ある程度は著者を信用して読み飛ばすのかについて葛藤し続けなければいけないのではないでしょうか.