2014年3月26日水曜日

年度末の報告

しばらく更新していませんでしたが,まだ生きています.年度末の近況報告を兼ねて三点.

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三月の中旬に太田朋子先生の80歳を記念して国際シンポジウムが行われ,微力ながらもお手伝いをさせていただきました.海外から多数の著名な進化学者が集まり,とても質の高いものだったのではないかと思います.

最終日には遺伝研でシンポジウムを開きましたが,発表者全員がUSアカデミーのメンバーという豪華な顔ぶれでした.発表内容すべてがweak selectionに関するものではありませんでしたが,この考えが後の進化学に与えた影響の大きさを感じることができました.

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昨年末からFrontiersシリーズのAssociate Editorを引き受けています.あまり日本語の記事がないので少し紹介しておきます.

もともとはスイスの研究者(神経科学者)たちが,コミュニティベースのオープンアクセス雑誌を作ろうと始まったものらしいですが,最近ではNature Publishing Groupが買収したりして注目を集めています.進化学に関連する分野ではFrontiers in Geneticsという雑誌が存在したのですが,最近新しくFrontiers in Ecology and Evolutionという雑誌も始められました. 少し変わっているのは,Editorial Boardが雑誌ごとにつくのではなく,細目ごとにあり(僕はEvolutionary and Population Geneticsというセクション),雑誌間で共通のレビュープロセスを持っていることです.

特徴的なのはレビューシステムで,最初のレビュー(これはいつもと変わらないレビュー)の後は,レビュワーとオーサーがウェブフォーラム(コメントをやり取りできる掲示板のようなもの)でお互いが納得するまでやり取りできるというものです.基本的な判断基準はPLOS ONE形式で,方法にさえ間違えがなければアクセプトするというものです.論文がアクセプトされた後はページビュー数などの独自の評価により論文をランキングしていくとのことです.つまり,論文の重要度は査読の時にではなく,出版後に評価されるべきであるという趣旨のようです.また,論文がアクセプトされた時にのみ,論文にレビュワーの名前が載る決まりになっています.

さて,エディターになると少し特典があって,一本だけ論文をタダで出させてもらえるということなので(もちろん査読はあります),お試しがてらに拙文をレビューしてもらいました.感想ですが,新しいレビュープロセス自体は僕の場合はとてもスムーズに働きました.雑誌のインパクトファクターなどではなく,素早く論文を出して引用を稼ぎたい,かつ科学的な質を保ちたいときに向いている形式ではないかと思います.ただ,レビュワーの負担が大きいシステムなので,投稿が増えたときにどうやって進めていくかがこれからの課題になると思います.興味がある方は是非投稿してみてください.

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STAP細胞の件.内容については触れませんが,Methodならコピペでもよかろうとか,Introductionだからコピペは仕方なしとかいうような意見を平然と言ってのける研究者がいるのにはびっくりしました.そういった考えをあぶりだす意味では意味のある事件だったのではないかと思います.程度の差こそありますが,剽窃に関しては現在はコンピュータで簡単にわかってしまうので,これまで以上に厳密にやっていく必要があります.アメリカなどでは文章を言い換えるという訓練がありますが,日本の英語教育ではあまり見たことがありません.そういった訓練も科学英語教育には必要なのではないかと感じます.

また,引用に関してですが,出典を示せばコピペが許されるわけではなく,引用箇所は引用だとわかるように「”」で囲むか,インデントをつけてブロックにするなどの明示が必要です.このあたりもわかっていない人がいるようなので少し驚きました.