今年のお仕事も終了しました.
年末はしっかり休みたいと思います.
来年は何本論文を出せるか.世知辛い世の中ですが,本数だけでなく内容も良いものを出せたらなと思います.
2007年12月29日土曜日
2007年12月19日水曜日
ヒトの正確な遺伝子数
The drifting human genome
Genomic drift and copy number variation of sensory receptor genes in humans
ヒトの遺伝子数は一体幾つか,というコンテストがヒトゲノム解析と共にありました.ヒトの遺伝子数は古くは放射線による突然変異などから数万個と予測されてきたのですが,僕が研究を始めた頃は遺伝子の発現データが増えてきた頃で,人によっては10万以上との推定がなされていました.
それがヒトゲノム配列が決まってくると,今まで別の遺伝子産物だと思っていたものが同じ座位からのalternative splicingによるものだというのがわかってきて,ドラフトゲノムが出たときには3万程度,さらに使われなくなった偽遺伝子を除くと数は減り,完全版の配列では20,000~25,000くらいに減りました.コンテストは25,947個と予測したRowenが優勝とされました.
しかし,当然といえば当然ですが遺伝子数にも個人差があります.最近よく研究されるcopy number variation (CNV)というものです.2番目のNozawaらの論文では,遺伝子によっては100コピー以上の個人差が存在すると述べられています.したがってこれがヒトの遺伝子数という正解は存在しません.
さて,問題はこれらの遺伝子数の変化が適応的な結果によるものか遺伝的浮動によるものかということです.Perryらの研究によるとアミラーゼ遺伝子(AMY1)の数には個人差があり,日本人のようなでんぷん質をたくさん食べる集団の方が遺伝子コピー数が高いという相関があるとのことです.
一方,最初の論文でZhangは正常遺伝子と偽遺伝子との間で多型中に存在するコピー数の変異と種間で固定したコピー数の変異の数を比べる方法(MKテストの変形)を行ないました.もし,機能的な遺伝子のコピー数の違いが適応的で正の淘汰を受けるなら,そういった変異は種間差でより顕著に現れるでしょう.しかし,この検定では有意な差が見られなかったと述べています.どちらにせよ,こういった研究はこれからより詳細に進められていくのではないでしょうか.
Genomic drift and copy number variation of sensory receptor genes in humans
ヒトの遺伝子数は一体幾つか,というコンテストがヒトゲノム解析と共にありました.ヒトの遺伝子数は古くは放射線による突然変異などから数万個と予測されてきたのですが,僕が研究を始めた頃は遺伝子の発現データが増えてきた頃で,人によっては10万以上との推定がなされていました.
それがヒトゲノム配列が決まってくると,今まで別の遺伝子産物だと思っていたものが同じ座位からのalternative splicingによるものだというのがわかってきて,ドラフトゲノムが出たときには3万程度,さらに使われなくなった偽遺伝子を除くと数は減り,完全版の配列では20,000~25,000くらいに減りました.コンテストは25,947個と予測したRowenが優勝とされました.
しかし,当然といえば当然ですが遺伝子数にも個人差があります.最近よく研究されるcopy number variation (CNV)というものです.2番目のNozawaらの論文では,遺伝子によっては100コピー以上の個人差が存在すると述べられています.したがってこれがヒトの遺伝子数という正解は存在しません.
さて,問題はこれらの遺伝子数の変化が適応的な結果によるものか遺伝的浮動によるものかということです.Perryらの研究によるとアミラーゼ遺伝子(AMY1)の数には個人差があり,日本人のようなでんぷん質をたくさん食べる集団の方が遺伝子コピー数が高いという相関があるとのことです.
一方,最初の論文でZhangは正常遺伝子と偽遺伝子との間で多型中に存在するコピー数の変異と種間で固定したコピー数の変異の数を比べる方法(MKテストの変形)を行ないました.もし,機能的な遺伝子のコピー数の違いが適応的で正の淘汰を受けるなら,そういった変異は種間差でより顕著に現れるでしょう.しかし,この検定では有意な差が見られなかったと述べています.どちらにせよ,こういった研究はこれからより詳細に進められていくのではないでしょうか.
2007年12月15日土曜日
2007年分子生物学祭り
学会から帰ってまいりました.
分生は規模が大きいので業者さんも気合が入りまくりです.96穴のプレートにマルチピペットで分注するスピードを競うピペッティング大会に誘われました.ピペドという自虐的蔑称が問題になっている昨今この企画は正直どうかと... ピペッティング速度はわりと自信があるのですが,上には上がいそうだし,成績が良くてもそれはそれで寂しい気がするので遠慮しておきました.他にも抽選による豪華景品が目白押しです.
と,今回の戦利品はなんといっても写真のとおり...
「荒木飛呂彦が表紙を描いたッッッッッ!
CELLをッ!
手に入れたゾォォォォォォォッッッッッ!」
ジョジョラー生物学者必涎の一品です.自腹で買おうか悩んでいたのでサンプルが貰えてラッキーでした.ちなみに,先月号のユリイカ誌で荒木飛呂彦特集をやっており,この表紙が描かれた経緯を著者の瀬藤先生が解説されています.
分生は規模が大きいので業者さんも気合が入りまくりです.96穴のプレートにマルチピペットで分注するスピードを競うピペッティング大会に誘われました.ピペドという自虐的蔑称が問題になっている昨今この企画は正直どうかと... ピペッティング速度はわりと自信があるのですが,上には上がいそうだし,成績が良くてもそれはそれで寂しい気がするので遠慮しておきました.他にも抽選による豪華景品が目白押しです.
と,今回の戦利品はなんといっても写真のとおり...
「荒木飛呂彦が表紙を描いたッッッッッ!
CELLをッ!
手に入れたゾォォォォォォォッッッッッ!」
ジョジョラー生物学者必涎の一品です.自腹で買おうか悩んでいたのでサンプルが貰えてラッキーでした.ちなみに,先月号のユリイカ誌で荒木飛呂彦特集をやっており,この表紙が描かれた経緯を著者の瀬藤先生が解説されています.
2007年12月6日木曜日
40th anniversary
「分子進化の中立論40周年」という講演会が来年の2月17日にあると知らされました.中立説ではなくて中立論というところにはおそらく意図があるのでしょう.
自分の誕生日ではないかと思ってよくよく見てみると,1968年2月17日が木村先生の中立説Nature論文が掲載された日のようです.未だに誤解されることの多い理論ですが,40年間に果たした功績は大きいでしょう.日曜日なので時間を作って聞きに行こうかと思っています.
中立説の功の部分についてはここに書ききれないほどあるので,罪の部分について少し書いてみます.それは分子進化を簡単にしすぎたことだと思います.
木村先生は非常に高度な数学的考察を経て中立論を確立したわけですが,得られた結論から突然変異の固定速度は突然変異率に等しいという実に単純ですばらしい予測が導かれました.したがって種差を考える場合(一般的なイメージの進化),固定する変異のほとんどが中立なのですから,突然変異が集団中に広がる過程についてはブラックボックスとして扱うことができます.その後の日本の分子進化研究は木村先生の功績を追うかたちで中立論に重きを置いたため,相対的に集団中でのプロセスについての研究が弱くなってしまったのではないかと思っています.
しかし,自分の誕生日が中立説の日だとは嬉しいですね.ちなみに,他の2月17日生まれの有名人やイベントはこんな感じ.
こういうのはとても便利です.雪の特異日なんてのは初めて耳にしました.
自分の誕生日ではないかと思ってよくよく見てみると,1968年2月17日が木村先生の中立説Nature論文が掲載された日のようです.未だに誤解されることの多い理論ですが,40年間に果たした功績は大きいでしょう.日曜日なので時間を作って聞きに行こうかと思っています.
中立説の功の部分についてはここに書ききれないほどあるので,罪の部分について少し書いてみます.それは分子進化を簡単にしすぎたことだと思います.
木村先生は非常に高度な数学的考察を経て中立論を確立したわけですが,得られた結論から突然変異の固定速度は突然変異率に等しいという実に単純ですばらしい予測が導かれました.したがって種差を考える場合(一般的なイメージの進化),固定する変異のほとんどが中立なのですから,突然変異が集団中に広がる過程についてはブラックボックスとして扱うことができます.その後の日本の分子進化研究は木村先生の功績を追うかたちで中立論に重きを置いたため,相対的に集団中でのプロセスについての研究が弱くなってしまったのではないかと思っています.
しかし,自分の誕生日が中立説の日だとは嬉しいですね.ちなみに,他の2月17日生まれの有名人やイベントはこんな感じ.
こういうのはとても便利です.雪の特異日なんてのは初めて耳にしました.
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