2009年5月18日月曜日

新型インフルエンザ

すぐ近所の高校で集団感染がありました.それにしても世間のニュースはインフルエンザ一色です.

個人的な意見では,今回のインフルエンザは若干死亡率が高いということはありますが,通常のインフルエンザと同じレベルの対応で構わないだろうと思っています.水際対策が徹底されていますが,症状が軽微であればあるほどそれをすり抜ける可能性は高く,いつかはすり抜けてくるだろうということは早い段階で予測できたはずです.

ただし,この意見はある程度新型インフルエンザの正体と広まりがわかってきたから言えることであって,早い段階で水際対策に見切りをつけることは行政対応として難しいでしょう.後だしのじゃんけんで,したり顔で政府の対応を批判する解説者がこれからテレビにも出てくるのではないでしょうか.

しかし,情報が少なく,可能性は低くても0では無い場合に我々はどういった行動を取らなければいけないのか.

僕はそもそも強毒型であれ,新型インフルエンザのパンデミックについては楽観的であります.もちろん,危険性はゼロでは無いですが,リスク管理にかけるコストとの兼ね合いになるのかと思います.少なくとも,映画のようにバタバタ人が死んで世界の終りのような大パニックになるということは無いと思います.今回の水際対策と封じ込め対策にかかったコストも一度明らかにした方が良いかもしれません.風評被害などの経済的な打撃も入れるとものすごい金額になると思います.

しかし,僕も飲み屋でビールを飲みながらだったら,いくらでもいい加減なことを話せますが,影響力のある立場で専門家として行政的な対応への意見を求められる,若しくは実際に自分で方針を決めなければいけない場合は弱腰の解答をしてしまうかもしれません.コストをかけて防疫をすればするほど結果は良いにきまってますから.

人間のリスク対策に関するコスト感覚は非常にいい加減なものだと思います.これから起こるかもしれない新型のパンデミックは恐ろしいかもしれませんが,普通の季節性のインフルエンザだって十分危険です.二次的なものも推定すると,年間一万人近くが日本だけで亡くなっているということはあまりニュースでは流れません(直接的な原因でも1000人近く亡くなります).

これは厚生労働行政一般に言えることですが,人の命はお金に換算できません.もちろん,誰もが一日も長く健康で生きたいと思っているでしょう.ただ,そのために無尽蔵にコストをかければいいというわけではなく,どこかで折り合いをつけなければ話は進みません.そのことをまじめに話し合おうとすると,命の重さをお金で計っているような不謹慎さが表れてくる,所謂タブーになる.医療が抱える問題もここら辺が根本的な原因としてあるでしょう.

ただ,今回の感染者の広まりのデータは疫学的にみると非常に重要なものになるでしょう.どれだけの被害があるかどうかは別として,強毒性のインフルエンザが将来発生することはあり得えます.その時に社会としてどのような対策を取るべきか,良い教訓になると思います.