2011年4月15日金曜日

安全を決めるのは

放射線のリスクの話が出るたびに,安全に対する基準というものに対する人間の認識の難しさを感じます.

100%死ぬとか100%安全とかいう極端な場合を除き,危険の度合いは確率的になるからです.確率論ほど人生に密着した理論はないのですが,これほど人間の直感に反している理論もないのです.生命保険やギャンブルは確実に胴元が儲かるような仕組みになっていますが,人間に安心を求める欲望や射幸心があるおかげで多くの人が参加しています.保険は人生のランダム性を下げることになるし,ギャンブルは逆にあげることになります.われわれは確率の振れ幅を変えるためににお金を払っているということになるでしょう.

放射線の話に戻ると,科学者であればどれくらい安全かということを決めることができると考えている方がいるかもしれませんが,科学的な立場から言えるのは,例えば数年後に癌で死ぬ確率がこれだけ上がるとかいうような客観的な数値のみです.それが安全かどうかを決めるのは科学ではなく政治の仕事です(もちろんその過程には科学者が深くかかわっています).