2012年7月3日火曜日

サルゲノム

Whole-genome sequencing and analysis of the Malaysian cynomolgus macaque (Macaca fascicularis) genome

現在京大の霊長研にいる東濃さんが基盤研にいる間に行ったカニクイザルのゲノム解析結果がGenome Biology誌にパブリッシュされました.本当は1番のりでカニクイザルゲノムを発表したかったのですが,投稿中に他のグループからのゲノム配列が2つ発表されてしまったので色々と苦しみました.

後発とはいえ今回の解析対象(マレーシア産個体)には大切な意義があります.これまでの2配列はモーリシャス産とベトナム産の二つの産地由来の個体が使われていました.実はこれらの二つはかなり特殊なサルと言われています.モーリシャスのサルは数頭の個体が近代になって船に乗って渡ったものとされ,遺伝的多様性が極端に低くなっています.また,ベトナムのカニクイザルは近所に住むアカゲザルとの交配が進んでいると言われています.そういった意味では,インドネシアおよびマレーシアに住むカニクイザル集団はよりカニクイザルらしいカニクイザルと言うことができるでしょう.化石の証拠でも,インドネシア・マレーシア集団が祖先集団であると言うことが示唆されています.

カニクイザルは僕が学生のころから対象としてきた生物なので,リシークエンスとはいえ,ゲノム配列の決定には感慨深いものがあります.マカクは実験用の動物と言うだけでなくエコロジーの点からも面白い実験材料なので,これから色々な研究が進んでいくことを期待します.