タミフルの青少年への副作用が問題となっています。今週のNatureのNewsでも取り上げられています。
http://ealerts.nature.com/cgi-bin24/DM/y/ec530SoYnI0HjB0BOpc0Ee
と、専門ではないので初めて英語で読んでみて気づいたのですが、Tamifluというのは化学物質名Oseltamivirとインフルエンザ(flu)の造語なんですね。2005年には日本では年間900万件が処方されましたが、残りの世界を全部併せても300万件の処方件数のようです。副作用の問題が日本で大きくなったのにも理由があるようです。
早急に科学的な結論を、という声は大きいですが、何でも科学的に決定できるというのは大きな間違いです。今回の場合は、研究者が製薬会社の寄付を受けていたというのは確かに問題ですが、だからといって簡単に答えが導ける類の問題ではありません。もともとのインフルエンザ患者にも異常行動が見られることが更に話をやっかいにします。調査する数を上げれば相関が見つかるかもしれませんが、何処まで上げれば良いかというのはわかりません。薬を飲まなかったから死亡する患者もいるかもしれません。
「科学的に」証明するには、適切な作法にのっとることが基本です。「俺がそう思うから」というのは客観的とは言えません。適切な作法とはここでは、異常行動と薬物の摂取の有意な相関、を統計的に示すことです。
しかし、自然科学におけるデータは客観的ですが、それを判断するのは人間の主観です。薬の副作用を安全側な基準と危険な基準のどちらで判断するか。これもケースによって違います。抗がん剤など、明らかな延命効果があるものはたとえ副作用が強くても使わざるをえません。その基準を決めるのは科学ではなく行政です。科学的なデータというのは確率計算なのですから。
というのもいかにも投げやりだと思ってしまったので、自分の考え方を書いておきます。
より常識的に考えると、薬を飲むことによって症状が緩和されるなら、薬を飲んだほうが異常行動は少なくなくてはいけません。こちらの方がより安全なテストとなるでしょう。有意な差が見つからなかったということは、逆に言うと、同じ異常行動率であることを否定できなかったということです。つまり、異常行動率が上がることを否定できません。
一般的にはどうすれば良いのか。
自分を守るためにはヒステリックに騒がず、自分で判断する力を身に付けることです。「うちは一階だし、きちんと看るから処方してくれ」と頼んだ方は非常に理性的であると感じます。リスクとリターンという概念と知識を持つことが重要だと思います。