NatureのJournal Clubからのパクリです.
Novel genes derived from noncoding DNA in Drosophila melanogaster are frequently X-linked and exhibit testis-biased expression
一般的な遺伝子進化のシナリオは,もともとあった遺伝子が遺伝子単位またはエキソン単位で重複したり移動をしたりすることによって新しい遺伝子が誕生するというものであります.つまり,遺伝子は突然生まれるものではなく,もともとあったパーツの組み合わせであり,起源をさかのぼると遺伝子の重複によって生まれたのであろうという考えです.このアイデアを広めたのは(起源はもっと古いですが)日本人の大野乾先生であります.
何故この考え方が重要かというと,進化は漸進的に起きるというダーウィンの考えにピタリと当てはまるからです.ある日突然新しい遺伝子が生まれるよりも,今ある遺伝子のコピー数が増え,それを改良して使うほうがより妥当であると考えられます.増えたほうの片方のコピーはもとの機能を保ち,もう一方のコピーが新しい機能や発現パターンを持つことにより,遺伝子の分業が効率的に進むと考えられます.
ところが,上にあげた研究ではショウジョウバエのゲノム中から,遺伝子をコードしていない配列から遺伝子配列が生まれてきた例を示しています.このシステムが生物学的にどれだけ重要な役割を持っているのかは定かではありませんが,無から有を生み出すような遺伝子進化も確かに存在するということになります.
最近の研究成果では遺伝子をコードしていない領域の多くが転写され,non-coding RNAとして機能するポテンシャルを秘めているとも言われていますが,遺伝子をコードしていない部分は一般的にはJunk DNAと呼ばれています.
ガラクタ(Junk)から偶然に遺伝子が生まれる.この例はややもするとガラクタの山からジェット旅客機が出来上がるといった進化のよもやま話につながると思うかもしれませんが,実際には全く違うレベルの話であると思います.ここで出来上がっているのはあくまでも一つの遺伝子であり,機械でいうと一つのネジにしか過ぎません.
スロットマシンを回して一度の回転で7が並ぶ確率はとても低いものですが,10,000人くらい同時に回せば一人くらいは777が揃いますが,全員一度に777が揃うことは限られた時間では難しいでしょう.一つの遺伝子が作られるのと,全部の遺伝子が一度につくられるのとでは天と地ほどの差があります.
また,このような例は明らかに遺伝子重複による遺伝子進化に比べればマイナーなものでしょう.ショウジョウバエは遺伝子重複が少ない生物ですが,それでも百以上の遺伝子が数百万年の間に遺伝子重複によって生まれています.