PLoS Geneticsの記事です.出た時はあまり注目していなかったのですが,その後色々なメディアで取り上げられているようです.
疾患の原因探索などで数人のDNAをプールしたサンプルの遺伝子解析がしばしば行われています.こういった情報はこれまで個人を特定できないので割とゆるいポリシーで公開されてきていました.
ところが,Homerらは全ゲノムレベルでのSNPデータがあれば,ある個人がプールされたDNAサンプル集団の中に入っているかどうかというのが判別できるということを示しました.アイデアや方法は非常に単純なのですが,0.1%しか入っていない個人の特定までできたというのだからその方法の強力さには驚きです.
これを受けてNIHは早々とプールされた遺伝子情報の公開を取りやめ,きちんと管理された形に変えたとのことです.これに関する議論がScienceなどでも取り上げられています.(http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/1165490; http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/sci;321/5894/1278)
これから個人ゲノム解析などが実用化されると,倫理的な問題も色々と湧き上がってくると思います.ただ,この方法はもともとそういった倫理的なことを騒ぎ立てるよりは,犯罪捜査などに有効な方法ではないかと考えられているようです.