2011年9月5日月曜日

8語に32ドルを払う

つい最近,Molecular Biology and Evolution(MBE)であったリトラクション(論文取り下げ)が海外のサイトで取り上げられていました.MBEはよくお世話になる雑誌なので気になるところです.

取り下げの理由自体は,不正というよりは大きな解析ミスに著者のグループが気付いたのが理由とのことです.僕も何度か自分の論文のデータが間違っていた夢を見たことがあるので,これには同情します.しかし,その後の出版社の対応がお粗末でした.

まず,雑誌にはリトラクションされたという一言があるだけで,どのような理由なのか,もともとどのような論文だったのかというのを読者が知る機会がないこと.これは一般のポリシーに反するようです.確かにPumMedにタイトルその他が載ってしまうことを考えると,少なくともアブストラクトやどのような理由で取り下げられたのかくらいは知りたいところです.

もう一点は,"This article has been permanently retracted from publication by the authors."というリトラクションの文章を見るのに,雑誌を購読していない人は32ドルを払わなければいけない仕様になっていたことです.購読していない人には,”This article has...",だけが表示されるということですから,実質8語に32ドルを払うことになります.よっぽどのもの好きでなければ払う人はいないでしょう.さすがにこれは編集のミスで,その後に修正されているようです.

論文の不正によるリトラクションでは写真の使いまわしや二重投稿が中心になっていると思います.MBEはそのようなデータはほとんど扱っていないので,リトラクションになる論文は少ないはずです(といってもデータの性質上見つかりにくいだけで,不正がないとは言い切れないでしょう).

敢えて好意的に解釈すると,今回のお粗末な対応は編集者がリトラクションになれていなかったからであると思います.