2008年10月27日月曜日

PCRの増幅率と数列


来週に近所の中学校で簡単なDNA実験を教えることになっています.先週に別の講師がPCRの増え方の細かいところを教えたのですが,少し難しかったようなのでもう一度復習しようと思います.

さて,教科書的にはPCRによってDNA分子は倍々,つまり2のn乗で増えていくということですが,実際には違います.鋳型のゲノムからは1サイクルあたり常に2n本のプライマーから下流にのみ増幅されたDNAが合成され,さらにその2n本のDNAからプライマー間のみを増幅した短い断片が合成されていきます.図は3サイクル目の増幅を示したものです.

と,ここまで来ればDNAの分子数をnで簡単に表せるなぁと思ってたのですが,高校の数学を忘れてしまったので教科書を読みなおす羽目に...

漸化式を立てるとnサイクル目の短いプロダクトの分子数は,an+1=2an+2n.

両辺を2n+1で割ってbn=an/2nと置くとbn=bn-1+(n-1)/2n-1,

上の式を1からnまで両辺を足し合わせていくと,

bn=1/2+(2/22)+...+(n-2)/2n-2+(n-1)/2n-1,

両辺に2分の1をかけてもとの式から引くと,

bn/2=(1/2)+(1/2)2...+(1/2)n-1-(n-1)/2n

bn=(2n-2n)/2n,

したがって,an=2n-2n,ということになります.短い断片は4サイクル目で8分子,5サイクル目で22分子,以下52,114となるはずです.

高校の数学って結構忘れてしまってますね.いい勉強になりました.ただ,毎回2倍で増えていって,そのうち2n分子は半分の長さのDNAなので引き算する,って考えるだけでも実は良かったりします.結果を見てから気づいたのですが.