2011年3月5日土曜日

Shifting Balance Theory

遺伝研で行われている集団遺伝学の輪読会,今回はMatthew HamiltonのPopulation Geneticsを読んだのですが,先日無事に終了しました.初版だったので色々と(中には酷い)間違いもあり,もう少しこなれた教科書のほうが勉強になるのかもしれませんが,トピックの選び方といい内容の構成といいなかなか独特の教科書で,読んでいて結構楽しめました.

 特に,最後の章ではWrightのshifting balance theory(平衡遷移説)について数ページを使って解説しています.普通の教科書では数行で終わってしまうこの理論の解説を丁寧にしているところは興味深いでしょう.

生物進化が複雑な適応度地形をどのように局所解にとらわれずに大局解に近づくかという問題は常に進化学者の頭を刺激し続けています.環境が変われば最適値も変わるということは明らかですが,果たしてそれだけで説明ができるのか.先日のカウフマンのモデルもそのようなものを意識しているわけですが,数ある理論の中で,集団遺伝学を勉強した僕としては,やはりshifting balance theory自体には疑問符はつくものの,遺伝的浮動と自然選択のバランスを考慮するWrightのモデルに一番ひかれるわけです.