ダーウィンが書いた「種の起源」です.
僕が持っているのは英語版は初版,日本語訳されたものは第6版です.第6版は初版が発行された1959年の13年後,1872年に出版されています.改訂の度にいろいろと追加変更がなされているようです.
進化を学ぶなら一度は目を通しておいたほうが良い本ですが,さすがに原著はあまりお勧めできません.重要な部分に目を通すくらいならできますが,英語も古いし,なにより言い回しが回りくどい部分が多々あります.せっかく日本語で良い訳があるのですから,こだわらない限りは日本語訳で充分だと思います.気に入った部分だけ英語でじっくり読んでみるとよいと思います.原著を抜き出して発表の時に引用すると賢く見えます.
第6版の日本語訳は「新版・図説・種の起源」という邦題です.これは原著というよりもリチャード・リーキーにより編集,注釈,図版の追加が行われています.非常にわかりやすくまとめられているのでお勧めです.
実際に種の起源を読んでみると,ダーウィンの慎重かつ大胆な考察やその博識ぶりには感動すら覚えます.気の遠くなるような膨大な事例を積み重ねて,種が神によって個別に作られたわけではなく自然選択によってもたらされたものであると論じていきます.
恥ずかしながら,これを読むまで知らなかったこととして,ダーウィンが獲得形質の遺伝を一部認めていることがありました.当時は遺伝の知識が一般になかった(ダーウィンはメンデルの論文については知っていたようですが)ので仕方ありませんが.ダーウィンは遺伝の仕組みについてパンジェン説という奇説を唱えています.(もちろん獲得形質の遺伝がメインであるとダーウィンは考えていませんでしたし,選択の主体は自然選択にあると考えていますが)
そうなると,ラマルクの用不用説とは根本的に何が異なるのかということになります.より根本的な違いはラマルクは生物は直線的に進化すると唱えたのに対してダーウィンは種は分岐しながら進化するとしたことのがあげられるでしょう.ラマルクの進化では生物は下等なものから高等なものまで直線状に並びますが,ダーウィンの考え方では木の枝のように多様性を獲得していきます.ラマルク的な考え方はチャールズの祖父エラズマスや先生のグラントも主張していたようです.
もちろん,遺伝の仕組みや大陸の移動が当時は明らかにされていなかったため,間違った議論を繰り返している部分もあります・しかし,(この本をきちんと読んでないと思われる)反ダーウィニストによる誤解,または極端な適応主義への誤解についてはすでにはかなりの部分に答えています.中立進化や性選択についても既に考察がなされています.
また,巻末にはリチャード・リーキーがダーウィンの発見から今日の進化学に至るまでの概略を解説しています.これも非常によくまとまっているので学習用には最適かと思います.
新版・図説 種の起源
On the Origin of Species a Facsimile of the First (Harvard Paperbacks)