2009年7月9日木曜日

日本の地位低下

科学者というのは微妙なもので,国からお金をもらっていながら必ずしも国のために働くことを第一の目的にはしていないでしょう.しかし,お金を払う政府としては自国の利益を第一の目的とするはずですし,税金を払っている国民も同じことを考えているのかもしれません.

まず一本目はNatureの記事

A highly annotated whole-genome sequence of a Korean individual

次世代ゲノム解読の競争で日本がアメリカや中国に後れを取っているのは周知の事実ですが,韓国の方が先に個人のゲノムのリシークエンスを完了してしまいました.これは非常に残念です.

同じ号のNatureの記事

Japan's tipping point


日本の科学力の低下を憂いている記事ですが,なかなか耳が痛いことが書いてあります.大学院に進む学生も減っているし,海外に出る学生もほとんどいない.経済も下向き.このままでは国際的な競争力が無くなってしまうだろう,と.

すべては現在の日本が内向きで近視眼的過ぎることが原因ではないでしょうか.これから2700億の大型予算がつくと言われていますが,応用向けの巨大な研究プロジェクトではなく,テニュアトラックの大規模な導入など日本の大学に活力が出るような構造改革に使った方が良いというような内容です.

根が深い問題で一朝一夕では解決できない問題かもしれません.僕はアメリカで2年ほどポスドクをしましたが,一番勉強になったのは科学に対する自由な姿勢でした.

最近気になっているのは,「日本の方が研究設備が立派なので海外にわざわざ出る必要はない」という若者のセリフです.大切なのは設備でもお金でもなく,外を向いてオープンに議論する環境なのではないかと思っています.日本の研究世界の多くはオープンとは言えない環境が多いと思います.ちまちま内向きな仕事ばかりやっていては日本はそのまま縮んで消えてしまうでしょう.