分子進化のほぼ中立説―偶然と淘汰の進化モデル (ブルーバックス)
太田先生が自らほぼ中立説について解説されたものです.ブルーバックスということで一般向けの本なのでしょうが,後半では遺伝子から遺伝子発現,ゲノム構造など話題が広がっていくので,進化学,遺伝学の知識以外にもゲノム分野の知識がある程度ないと理解するのは難しいかもしれません.
前半では集団遺伝学の話,中立説の話からほぼ中立説が生まれたいきさつなどが書かれています.後半では,遺伝子発現やゲノム構造など,生命現象にみられる様々な現象がドリフト(偶然の結果)と淘汰の両方の産物ではないかということに考察が及んでいます.
真核生物にみられる高次のゲノム構造が,「有利だから」という単純な理由で生まれたのではなく,集団サイズが小さいために淘汰が弱く働いた結果であるというMichael Lynchの考え方もほぼ中立説に基づいた考え方だと言えるでしょう.
マイクロRNAなど最新の話題も多く含まれており,最先端でトレンドな進化観を垣間見ることができますが,完全に理解するには結構な勉強が必要かと思われます.