2007年7月20日金曜日

トライアルアンドエラー

生物系ブログの有名人,柳田先生のブログより.新潟の地震による車の部品生産への影響と生命システムの違いを考察していました.システムのロバストネス(頑強さ)がどれだけあるかということでしょう.

> 最後の興味は結局、人間はこのような場合、細胞のような生命体よりも賢くふるまっているのだろうか、ということになります。

進化生物学的視点から見てみます.人間の賢さがいわば「予測的」であるのに対して,進化の賢さは「トライアルアンドエラー(試行錯誤)」的です.良い方向にでも悪い方向にでも変わって,生き残ったものが次の世代に伝えられます.突然変異に方向性が無くても,結果には方向性がある.ここが自然選択説の一番神秘的なところだと思います.

進化による変化は多くの場合,ごく微量です.そのかわり,その少しの変化が次世代に伝えられます.

人の学習は,予測と言う意味では賢く働きますが,過去の記憶・経験すべてを引き出すことはできません.歴史のすべてをひっくり返して最適解を導き出すような演算を人間は行っていません.自分の知っている範囲,自分の経験した範囲で得た答えを他人の意見とつき合わせて結論を出します.そして,世代が変わるたびに知識はリセットされ,いちから学習しなくてはなりません.

どちらが賢く働くのか.試行錯誤的戦略は時間の積み重ねにより,少しずつ,着実に賢くなっていきます(賢いという擬人的な言葉は不適当だとは思いますが).その時間の積み重ねは本当に長く続いています.

今まで生命が歩んできた時間と人が知恵をつけてから経た時間は比べるべくもありません.少なくとも,今現在は時間の長さには人類の英知はかなわないといったところでしょうか.